こんにちは!
タカラガイ博士こと、ハーマイお兄です。
日本人の皆さんなら、一度は勉強したことがある日本文学。
例えば、かぐや姫の物語とも言われる「竹取物語」、紀貫之が作った「土佐日記」、日本最古の和歌集「万葉集」など。
どれも平安時代(794年~1185年)には既にあったとされる約1000年前のとても古い書物ですが、ここになんと「貝」が登場します。
そこで今回は、「貝」が日本人にどのように扱われていたのかを調べてみたのでご紹介します。
竹取物語に登場する燕の子安貝
まずは過去の記事でも紹介した、竹取物語で登場する「燕の子安貝」です。
平安時代初期に書かれたといわれる「竹取物語」ですが、この作中で「燕の子安貝」というワードが記載されています。
「石上中納言には、『燕(つばくらめ)の持(も)たる子安貝一つとりて給へ。』といふ。」
(出展:竹取物語)
これは「燕の産んだ子安貝を持ってきなさい」という意味です。
かぐや姫に求婚を迫った5人に対して、この世の珍しい宝を集めてくるように言い放った言葉です。
手に入れることが不可能な無理難題を出している場面ですが、ここで子安貝=タカラガイの記述があり、平安時代から宝物の一つとして子安貝が重宝されてきたことが伺えます。
ここでは空想上の物にタカラガイを使って例えていますが、突如出てきたワードなため、あまり貝の存在感は見出せていません。
他の作品も見てみます。
万葉集に登場する鮑と磯貝
続いて、万葉集を見てみましょう。
万葉集は奈良時代末期から成立した日本で最も古い和歌集ですが、ここでも「貝(アワビ・磯貝)」が登場しています。
「伊勢の海人の 朝な夕なに 潜くいふ
鮑(アワビ)の貝の 片思ひにして」
(出展:万葉集・巻十一2798)
これは「伊勢の海人(あまさん)が、朝ごと夕ごとに潜って採ってくる鮑(アワビ)の貝のように、私の恋もずっと片思いのままだなあ」という意味です。
鮑(アワビ)と片思いが何故結びついているのかというと、アワビを真上から見た時は全体が二枚貝のように見えますが、実際は巻き貝のためひっくり返しても殻がありません。
二枚貝なら両方対になるはずの殻が巻き貝には片方にしか無いため、片方の思い=片思いを連想させています。
またこれも同じく万葉集から…
水くくる 玉に交じれる 磯貝の 片恋ひのみに 年は経につつ
(出展:万葉集・巻十一2796)
これは「水中の玉に混ざって岩についている貝のように、片思いの切ない恋のまま年が過ぎてしまう」という意味です。
岩にくっついて離れない貝と、切ない恋心がくっついて離れない片思いを掛け合わせていますね。
そのまま、年がどんどん経ってしまうというのは、なんだか現実的でとても悲しいものがあります。
21世紀の現代でもこういう経験している人はいるんじゃないかなあ…
ちなみにこれら二つの歌は寄物陳思(きぶつちんし)という、恋の感情を自然の物に例えて表現をする表現様式を用いています。
上の歌であれば鮑(アワビ)と片思い、
下の歌であれば磯貝と片思いを掛け合わせているのですね。
片思いだらけですが、思いを馳せる女性を表したとても良い歌だと思います。
片思いだらけとか言うな笑
現代ではテレビやパソコン・スマートフォンが普及し何もせずとも毎日暇を潰せてしまう時代になりましたが、
電子機器が一切無かった平安時代においては、やはり海や山などの自然が主な暇つぶしであり、磯貝やアワビを日ごろから見ていて馴染み深かったからこそ作られた和歌なのだと感じます。
土佐日記に登場する忘れ貝
最後に日記文学「土佐日記」を見てみましょう。
土佐日記も平安時代に作られたと言われる日記文学作品ですが、その中の和歌に「忘れ貝」というワードが登場します。
「寄する波 うちも寄せなむ わが恋ふる
人忘れ貝 下りて拾はむ」
(出展:土佐日記)
これは「寄せる波よ、どうか浜辺に打ち寄せておくれ、(恋しく思う人を忘れることが出来る)忘れ貝というものを。そうすれば、(船から)降りて拾うから。」という意味です。
土佐から京へ船で帰る途中、悪天候に見舞われます。
その為に一旦停泊していた港の浜辺で子供達が美しい貝や石を拾っていた時に、紀貫之の妻が土佐でなくなった我が子のことを想いだして恋しくなり詠まれた歌です。
子供を忘れられない母親を表す、少し悲しくなるような歌ですね。
まとめ
如何でしたでしょうか?
今では貝と言ったらアワビやサザエ、アサリなどの食べ物としての認識しかありませんが、
昔は話の途中で歌として挙げるほど、貝は人々に親しまれていたんですね。
最近のJ-POPで「貝」ってワードを使っているアーティストを聞いたことが無いにゃ
私の野望はタカラガイをひっそりと、そして確実に日本人の心にあり続けてもらうために宣伝活動のようなことをしているのですが、
野望の一つに「現代のJ-POPにタカラガイという言葉を入れさせる」を加えるのもいいかもしれませんね。笑
最後までお読みいただき、ありがとうございました。