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オタクがまだ虐められていた頃のお話【ちょびっツ、君が主で執事が俺で】

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それはまだオタクが認めれていなかった頃のお話。

 

 

 

彼はただ、好きなアニメを通じて友達が欲しかっただけなんだと思う。


自分から話題を持っていくのは苦手だから、意思表示をアニメグッズに任せ、筆箱にキーホルダーをつけて主張していた。

 

それはまだオタクが認めれていなかった頃のお話。


それは、「君が主で執事が俺で」のキーホルダーを筆箱に付けていた頃。

 

女子に「きっも」と言われた。

 

その時は何がキモイのか全く理解出来なかった。

ただ、誰かに共感してほしくてつけていたものを否定されたことが悲しかった。

 

 

 

 

 

でもある日、ちょびっツのクリアファイルを持っていると、声を掛けてくれた幼馴染の女の子がいた。




「ちぃが可愛いから、私もちょびっツ好きだよ」と言って似顔絵を描いてくれた。

 

 


本当は嬉しいくせに、幼馴染だから、「俺、ちょびっツそんなに知らんねん。」と強がって気のない振りをした。

 

 

 


幼馴染からはそれからしばらくの間、やたらとちょっかいを掛けられたり、声を掛けてくれたりしたけど、彼はしつこいと嫌がって女の子を避けていた。

 

 


ある日、1度だけ、君のクルクル天パー好きだよと笑いながら言われた。

でもそれは彼のコンプレックスだったから、彼は皮肉られたと思って机を思いっきり蹴って怒った。

 

 

 

 

時は流れて数十年後。

 

 

縮毛矯正をして、彼女を作って、

アニメに飽きて、ゲームに飽きて、彼女と別れて、

何も楽しみがなくなって、

現実に嫌気がさして、

あの頃の面影一つない彼。

 

 

 


久々に地元に帰って、車でアテもなくぶらついていた時、

何となくあの幼馴染の女の子の家を通りかかってみた。

 

 

 

 


幼馴染の家は、もう跡形も無くなっていた。

 

 

どこへ行ったのかも知らない。

 

 

 

 

 

もう会うこともないだろう

 

 

 

 

 


僕は物思いに耽って一服し、現実に還っていった。

 

 

 

 

 

 

おわり